Amazon Bedrock 生成AIアプリ開発入門 の書評 という名の雑記
Amazon の IT 系の数ジャンルでベストセラーとなっていることをはじめ、いろんなところで話題になっている書籍「Amazon Bedrock 生成AIアプリ開発入門」の読後レビューとしてのエントリとなります。
「Amazon Bedrock 生成AIアプリ開発入門 」とは
KDDIアジャイル開発センター株式会社 の 御田 稔さん(@minorun365)、株式会社Relicの 熊田 寛さん(@hedgehog051)、富士ソフト株式会社の 森田 和明 さん(@moritalous)の共著により 2024年6月26日 に発刊された、AWS の生成 AI サービス Amazon Bedrock について、および Amazon Bedrock を用いた 生成 AI アプリを開発する際の勘所を解説した書籍です。
本エントリ執筆時点で、Amazon のクラウドカテゴリーで1位となっていました。関心が寄せられていることが伺えますね。(私の所属会社のメンバーが執筆した本もランキング入りしてるな…よしよし)
そもそも、お前の生成 AI のレベル感は?
2024年3月に開催された JAWS DAYS 2024 のなかで、著者の一人 御田さんが登壇されていた「生成AIで社内文書検索!Bedrockの新機能でRAGアプリを簡単に作ってみよう」のようなハンズオン形式のチュートリアルを与えられれば問題なく完遂できるけど、基盤モデルって何?とか、各モデルの特徴や差異って何?って聞かれると、途端にモゴモゴ言うくらいのレベル感です。
要は、断片的には知っているけど、本質的にはよくわからん勢です。
個人的には IT 関係に限らず、インターネット上では(語弊を恐れずに言えば)有象無象の情報が氾濫していて、しっかり理解したいときにはできれば本で読みたいと思っています。
それは文書は紙媒体で読みたいとかいう話ではなく、刊行物として出版される工程の中で複数人の目を通した校閲をしているはずなので、情報の正確性の観点ではインターネット上で見つかる情報よりも高いと考えている点にあります。
そのため、生成 AI についても体系的に書籍で把握したいなとは考えていたものの、現時点で最もホットなジャンルである生成 AI の世界では進化が早く、執筆から発売までの間に一定程度時間を要する出版物においては執筆中に現状が変わってしまう懸念があり、情報の正確性や精度を商業的に保つのは難しそうだな、と感じていました。
元来、進化の早いクラウド業界において、生成 AI の進化は格段に早く、AWS の公式日本語ブログでも「週刊生成AI with AWS」として毎週アップデート情報を配信するほどです。
レビュー
実は、著者代表である御田さんから書籍を恵贈いただいており、発刊前の AWS Summit Japan 2024 開催前あたりに書籍を送付いただいていました。
そのため、発刊前から読み進めてはいたのですが、ハンズオンまでは実施する時間は取れていないためハンズオン部分については言及を省きます。
ただ、前述の通り進化が早い生成 AI 領域では情報の陳腐化(UI が変更されて書籍掲載当時と異なってしまうなど)が起こり得るかと考えられるので、いざハンズオンをやろうと思った時に、すでに AWS を含む Amazon Bedrock 側が進化してしまっている可能性があるのでは?と思い、なるべく早くハンズオンをやっておきたいところです。
しかしながら、著者陣は技術の進化と書籍の乖離が生まれてしまう点も十分承知の上で、本書で掲載しているサンプルコードを Github リポジトリ で管理を行い、当面の間アップデートを継続してくれるとのことです。
ご厚意でベストエフォートでの対応かと思いますが、一定程度ハンズオンのサンプルコード部分が常に最新化されるそうなので、ご自身のペースで読み進めてハンズオンを実施しても陳腐化しなさそうです。
想定読者については、冒頭で「AWSやPythonについての初歩的な知識があることを前提」と述べられていますが、「生成 AI って何?」とか「なぜ流行っているのか?」「生成 AI を利用するとどのようなことができるのか?」というそもそも論の疑問にも答えてくれる内容となっていると感じましたので、実際に構築作業ができる/する エンジニアのみならず、営業や経営層など、トレンドとなっている「生成 AI」というキーワードについて、一通り網羅的な知識をつける目的でも十分読める/役立つと思います。
加えて、著者陣の言語化の巧みさだと思いますが、たとえや言い換えが絶妙で、AI 領域が本分でない私でも理解がしやすいと感じました。
また、Amazon Bedrock で利用できる各社のモデルに対して、統一した同一のプロンプトを実行した結果を利用していて、モデルごとの特性やバージョン間の優劣、性能差を比較しやすいと感じました。
なお「AWSについての初歩的な知識」を想定しているとあるものの、巻末の付録では、AWS アカウントの作成手順に始まって、ハンズオンを実行するまでの環境整備手順も解説されているため、これを機に AWS というもの自体を触ってみようという方にも適した一冊かと思います。
おわりに
先日開催された AWS Summit Japan 2024 でも著者のお三方が、お揃いで本書の書影のTシャツを着て参加されておられましたが、会場内で見かけるたびにどなたかから声をかけられている or しゃべっている状況で本書の影響や期待値が高かったのだと窺えました。
進化の早い生成 AI 領域に対して校了の直前までアップデートを追いかけて修正を繰り返したと伺いました。
ここまで丁寧に体系立てて書籍化いただいた情熱に本当に感謝です。
もう一周、次はハンズオンも実施しながらじっくりと拝読させていただきます。